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本サイト「クリスタルクリア」のブログ。 http://kinsenka.chitosedori.com/
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「食べる」という動作は基本的にエロティックなものだと熊吉は認識している。

いつからそんなことを考えたかなんて覚えがない――何の影響かなんてことも記憶にない。祖父か父か兄か。
(まあ、だれでもいいか)
だれであったとてどうでもいいことだ。幼いころの家庭環境の影響ではなく、仮に遺伝だとしたところで、事実として我が家の男系の血統に関してはこと女性に対する感覚についてブレがないのだから大した問題ではない。
一般に、変態という意味で。

ぐるりと思考が一巡したところで、熊吉は意識を目の前の女性に戻した。
無心に熊吉が作ったパフェを食べているのは幼馴染兼恋人の宇佐見兎美だ。
同じ出版社に勤めているとはいえ、人事部の兎美がきっかり週休2日なのに対し、営業部の熊吉の休みはフェアがああだイベントがこうだ受賞がなんだと不定期で、なかなか重なることがない。
今回は、偶々二人の休みが土曜日に重なることが判明したため、昨晩から兎美が熊吉の部屋に泊まりにきていたのだった。
ふたり昼過ぎにゆったり起きて、兎美がシャワーを浴びている間に熊吉が作ったパンケーキを食べ、雑誌を読んだりネットで調べものをしたり何ともなしにゴロゴロしていたところ、彼の姫からリクエストが飛び出したわけだ。

曰く、「パフェが食べたい」と。

時間としてもちょうど3時前。
熊吉は所謂、世間一般で言うところのパフェを想像し、今家にあるものを思い浮かべたところで、作成に取り掛かった。

器は、100均でいつ買ったかもわからない縦に長いワイングラスだ。
大きく盛ったところで、きっとカロリーやらなにやらを気にしてぜんぶ食べるには葛藤が生じるだろうから丁度良い程度だと割り切る。
変わらずクッションに埋もれてソファの上でこちらを観察する彼女をそのままに、熊吉が作ったのはコーンフレークにチョコとバニラのアイスを小さく盛りつけ、ポッキーを数本とウェハースを刺して適当に砕いたナッツを散らせて完成だ。
アイスは昨日二人で食べようと買ってきたものだし、ポッキーやウェハースはただのおやつだ。ナッツに至ってはただのつまみである。
飾り付けに余った分は、彼女が帰ったあとにでも食べようとラップを掛けてとりあえずぜんぶ冷蔵庫に放り込んだ。彼女が口にしないものの扱いなんて腐らなければまあどうでもいい。
差し出したグラスを見た兎美の瞳は珍しく、怖い意味ではなくきらめいていたからまあ正解だったのだろう。

はくはくと食べる兎美は贔屓目にしても可愛い。

溶けたアイスを口に運ぶそのさまをじっと見ていると、ようやく体育座りでパフェを食べていた兎美が熊吉を見た。
「何よ」
せっかく可愛い顔をして食べていたのに、眉根を寄せて聞いてくるのを無視し、熊吉は感想を強請った。
「美味しい?」
「…美味しい」
どこか悔しそうな顔をする兎美に苦笑する。
「取り合わせは悪くなかったみたいだね。まあ、既製品組み合わせただけだし」
コーンフレーク、アイス、チョコレート菓子、スナック(ただし、つまみを含む。)。
これではずれたら、完全に食べ合わせの問題だろう。
「チョコレート、好きでしょ」
「うん。ねえ」
「何?」
「なんでこういうのさっと作れるの」
パンケーキとか。ついでに紅茶も。ティーバッグじゃない、茶葉の。
「趣味かな」
ソファに座る彼女を、その下のラグに座り見上げながら答える。
「…趣味?」
「うん。最初は、まあ、ね、ホラ、女の子に、お菓子を食べさせたいという欲求が元だったんだけど…」
瞬間、兎美が半目になった。
「ごめんなさい。手作りお菓子にいろいろ混入して食べさせたかったんですホワイトチョコレートとかいいよね!とか思ってた時期がありました本当にごめんなさい!」
身体を起こして兎美に告げるが、既に彼女の視線はパフェに注がれている。
「してない!それには何もしてないから!やりようがないでしょはちみつすらかけてないのに!」
そもそも熊吉がいくらお菓子作りの腕を磨いたところでだれも食べてはくれなかったのだ。味ではない。
信用の問題である。

「今は、兎美ちゃんのためにしか作らないよ」
「…お菓子を?」
「お菓子でも、なんでも」

ニコリと笑うと、兎美は半目を伏せて最後のコーンフレークに取り掛かり始めた。
溶けたアイスがフレークに沁みて、ほんのりやわらかくなっている。
パリ、と目の前の彼女が咀嚼する音だけが、土曜日の昼間のあたたかい部屋に響いていることに、熊吉はなんだかたまらない気持ちになった。
「兎美ちゃん、ぼくの料理好き?」
「美味しいわ。ムカつくけど」
「ならよかった。ねえ兎美ちゃん」
「何」
「ぼくと家族になってくれない。ずっと、きみと一緒にごはんが食べたい」
最後のひとくちを口に運んだあと、スプーンをグラスに挿し、兎美の動きが完全に停止した。
「兎美ちゃん?」
「あんた間違えてない?」
確かに今、兎美と熊吉は付き合っている。
そうであってなお、猫見鈴が熊吉の女神であることを、兎美は知っている。もう、10年以上もずっとそうであることを、兎美は知っているのだ。
「間違えてない」
「だってあんたそれ、」
そうしてしまえば、もう間違っても彼女と結ばれることはない。
仮にいつか離婚したとて、鈴は一度親友と結婚した男を伴侶に選ぶことはないだろう。
彼女の配慮は、でも熊吉には逃げにしか思えなかった。
だから、塞ぐ。とっておきで蓋をする。
普段自分がよく使う言葉で否定する。
「女神様と、結婚はできないよ」
言った瞬間熊吉を見た兎美の顔は羞恥からか真っ赤に染まり、困ったように熊吉を見ていた。
身代わりだとか、そういう発想に飛ばれるケースも想定していたが、そこまではいかなかったらしいと内心息をつく。
「けっこん」
「そうだよ、結婚。もっと言えば、兎美ちゃんに、ぼくのごはん、ずっと食べてほしいなあ」

ぼくがつくったものが兎美ちゃんのからだをつくるんだよ。すてきでしょ。

「人間の細胞って、だいたい数年で入れ替わるんだって、ぜんぶ。だから、結婚10周年くらいになれば、もう兎美ちゃんはぜんぶぼくのだね」
「…それ、なんか、語弊が」
「兎美ちゃん、いいって言ってよ」
感想を強請るように、熊吉はまた兎美に強請る。
グラスをそっと彼女の手から外して見もしないままサイドテーブルへ置く。
空いた両手を、自分の両手でそっと包んだ。
「言って」






数分して、熊吉の両手に自分の顔を寄せた兎美を見て、熊吉はうっそりと微笑んだ。



いただきます、兎美ちゃん。




::::::::

リハビリ。
おとなになってから恋人になったけど、普段忙しいのとゆったり過ごすのがハマりすぎて清いお付き合いをして1年くらいとか。
表向きネコ美ちゃんを追いかけてるけど実はウサ美ちゃんにベタ惚れの熊吉が書きたかったんだけどおやおやおやぁ…??
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こんばんは、咲です。

ちょっと荒んでいるのでべったべたな蕎麦が読みたくてたまりませぬ…
ウワァァァン!まあ自分で描いてるのは太入だけどな!!<原稿

そういえば、気がつくと10000Hitしていて非常に驚きました。
敢えて気にしないように下のほうに設置しておりましたので余計に。
何かお礼に…とソムソムしておりますが、どうしよう(´・ω・`)
とりあえず通常の更新からしようねって話ですよね!ごめんなさい!
明後日から(もう明日か)地元へ戻るのですが、PCは持って帰らないもので、それまでに何か更新したいところでございます。

ううう、蕎麦ー、蕎麦ー
なんだかガー!っといろいろ降りてきた(湧いてきた)ので昨日今日でネーム1本仕上げました。
ネタとしては日和出版社シリーズ(現代パラレル)で、原稿に起こして、もう一回くらいヒヨンリ出てぇということで、今年の夏、8月のモンゴリアンチョップ!7合わせで頑張ろうと。
(6も行けなかったしな…)

で、原稿やろうとしたら消しゴム見つからないとかな…どんだけだよ…
最近のらくがきは専ら書き味のよいボールペンでぐりぐりやっていたため、気づかなんだ。

自分で自分が信じられない一方、なんだかサブキャラ扱いで何気なく出したうさみちゃん、クマ吉、ニャン美ちゃん妄想が止まらなくてちょっと更に自分が信じられなくてふいた。

3人は幼なじみでうさみちゃんは高卒で就職、ガンガン仕事できちゃうのでトントン昇進。クマ吉とニャン美ちゃんは大卒就職で、前者はぶっちゃけトークがウケる編集(勿論ストーカー)で後者は秘書課のいもこの上司。就職してから3人再会。よくね。
でいろいろ考えてたら、うさみちゃんとクマ吉のカプに目覚めてもうだめだ私と思った。
馴れ初め話のあらすじまではできた。これ書く?書くの??それとも描くの。
クマ吉は確かにニャン美ちゃん好きなんだよー!あれは、そう、永遠のアイドルで、見たら追いかけなきゃいけないみたいな刷り込みがあって、ストーカーがライフスタイルみたいな感じで、もうそれはどうしようもないんだけど、うさみちゃんは、クマ吉にとって「放っておけない」んだ。どっちを選ぶとかじゃなくて、相手がどういう存在か、なんだ。
なんかこれでまた描けそう。書けそう。ていうかこれほんとさ、どこまで広がるんだ…



あ、ペン介くん忘れてた
そいつは、嗚咽が止まらない俺に全身でしがみついてぎゅうぎゅう締め付けながら、泣かないで、と言った。

「ぼくがいるから」
「ぼくはいなくならないから」
「だいじょうぶ」

もうひとりになんかしないから。

今思えばよくわからないその言葉だけがあの数日のなかで唯一鮮明な、そして温度を持っているもので。
残念ながら、どんな顔して言われたのかとか、細かい状況等は全く覚えていないけれど。

そしてその言葉どおり、以来そいつはずっと俺のそばにいる。

□■□■□   ■

ふつりと意識が浮上し、耳に届いたのは電車の音と鳥の声。ワンテンポ遅れて、今が朝で、自分が目覚めたことを把握する。
ベッドの上、自分の傍らに無造作に転がっている携帯の画面に触れると、設定したアラームが鳴るまであと4分と微妙な時間であることがわかり、ぼすんと枕に突っ伏した。
いつもはアラームが鳴っても気づかず寝ているほどの自分が自然に目覚めるのは本当に珍しい。
土台、昨日はなかなか寝付けなかったのだ。至極、個人的な事情により。

「いるかさーん、おきたー?」

慣れた声と一緒に、とたとたと廊下を歩く音。一度ぎゅっと目を瞑ってから、入鹿はタオルケットに包まったまま叫んだ。

「まーーーだーーーー」
「それ明らかに起きてるよね!」

突っ込みに次いで、部屋の引き戸が開いたスパンという音が飛んでくる。

「もう」

気配がベッドに近付き、入鹿以外の体重が掛かる。ギシリと寝台が鳴く。貧弱。

「入鹿さん、朝。」
「うん」
「おはよ」

おはよう。
タオルケットから顔を出すと、ニコリと笑う青年の顔があった。

岡山太一。

入鹿よりちょうど10上の、過去幼馴染だった人。
現在の肩書きは多分、保護者。

「ごはんたべよっか」
「おう」

先に下りてるよと告げて自分に向けられた背をぼんやり眺める。
これを、俺は何年追いかけてきたかなあと入鹿はふと考えた。
いち、に、さん。

(今日、俺は19になるから、おなじだけか)

だって、自分が自分という存在に気づいたその時からもう太一はそばにいたのだ。本当のきょうだいじゃないことを知ったときに驚くくらいには、もうずっと、ずっと一緒だった。

(…おかしいなあ)

今日は毎年来る特別な日だった。
もう5年以上前に入鹿の家族がこの世界からいなくなった日。
引き換えに、太一が保護者になった日。
そして、約束をくれた日。
でも、それは「毎年恒例の」と言っていい程度の日だった筈だ。少なくとも、入鹿にとっては。

(…俺、何かしたかな)

相変わらず頭がはっきりとしない。

『明日が終わったら、別々に暮らそっか』

昨夜、太一が言ったその言葉がどうしても頭から離れない。
今気づきましたがモンゴリアンチョップ!6やるんですね…!!

【モンゴリアンチョップ!6】バナー

来年の2月、で1月サークル応募締切りで、となると、
今から作業をすすめても間に合うかなあ…。
参加しようかな。
なんだかわくわくしてきた。
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